コラム/江戸時代に書かれた戦記物「皆川正中録」(主人公・皆川広照)の「唯一の現代語訳」の価値をご紹介します。※2025年7月再販

皆川正中録 再販

2025年7月、小松義邦氏による現代語訳「皆川正中録」が再販となりました。初版は2022年(令和4年)6月で、ご要望が多かったための再販決定です。唯一の現代語訳です。(以前の書名「口語 別本 皆川正中録」を2025.12の5刷で「現代語訳」と改訂しました)
詳しくは→ 「現代語訳 別本 皆川正中録」再販のおしらせ

この冊子自体のご紹介は コチラの記事 でしています。

唯一の現代語訳ができるまで、をご紹介

今回は、小松義邦氏に、複数の史料を出してもらいましたので、唯一の現代語訳ができるまでの流れをご紹介したいと思います。

そもそも皆川正中録とは

「皆川正中録」は、皆川城の最後の城主であり栃木城を築いた「皆川広照」を筆頭とする皆川氏の戦記物で、17世紀から18世紀初期頃に書かれたとされています(『栃木県大百科事典』)。多くの人たちに親しまれ、江戸時代には筆写して家に残すほど、地元では歓迎されてきました。
作者の記載がどの写本にも載っていないため、作者名はわかりません。これだけ長く存在が知られている戦記物なのにそんなことあるのね、と驚きですよね。

小松氏によると、登場人物たちが実在の武士たちの名前であるため、複数の地方自治体史(町史・村史)に、史実と誤解されて、誤った記載が残っているそうです。


史料(1)/ 写本1(原文)

まずは、こちらが、栃木県立図書館で入手できる写本です。

江戸時代に誰かが原文を手書きで写したものです。コピー機のない時代、手元にこの戦記を残したいと思った人々が、こうして手書きの写本を作っていたわけです。
小松氏いわく、「関心があって目にしていたけれど、当時の我々は『西方町郷土史研究会』だったので、他の市町村についての古文書を解読する流れはなかったのだよね」とのこと。
ちなみに、漢字だけではなくカタカナが使われていることが意外でした。


史料(2)/ 明治時代の書籍(読み下し文)

明治30年(1897年)に、皆川正中録の一部を講談調の読み下し文にして、「皆川戦記」のタイトルで書籍が出版されました。何かの雑誌に30回にわたって連載されたものをまとめたものだそうで、東京市日本橋の一二三館(ひふみかん)と栃木町の白石東光堂の連携での出版です。それがこちらです。(コピーしたものです)

原文を「読み下した」もので、漢字のすべてにフリガナがついていますが、読点(、)はあるものの句点(。)がなくて一文の区切りがわからないものとなっています。現代ではなかなかこれを読み通せる人は少ないでしょう。


史料(3)/ 昭和の書籍(読み下し文)

昭和11年(1936年)に、鹿沼町の「下野郷土史研究会」から5巻本(第五巻が欠落)(著・大谷瀬平)が出版され、昭和38年(1963年)に、第五巻を補った全6巻の「考註 戦国大名秘録(皆川正中録・全六巻)」(著・日向野徳久)が出版されました。

両書籍とも「読み下し文」で、句読点はありますが、ふりがなが全くありません。


原文と読み下し文のみでした

「皆川正中録」は栃木エリアで有名でありながら、ずっと上記の「原文」「明治の読み下し文」「昭和の読み下し文」でしか存在していませんでした。


史料(4)/ 写本2(原文)――中田益雄家文書

昭和55年(1980年)に、当時の西方町本郷の中田益雄家から二千余点の古文書が県文書館へ寄託されました。その中に全六巻の皆川正中録の写本があることを、西方町郷土史研究会の荒川哲男氏が発見しました。コピーした冊子がこちらです。

小松氏いわく、「西方町の旧家から出た、ということで、私たち『西方町郷土史研究会』が動くことは自然でしたので、荒川哲男氏が解読して解読文を作成し、その解読文をベースに私が読み下し文と口語文を作成して、解読文の冊子と読み下し文・口語文の冊子を『西方町郷土史研究会』で発行しました」。

ちなみに、冒頭の写本は漢字とカタカナで書かれていますが、こちらは漢字とひらがなです。

▼こちらが荒川氏の解読文の冊子です。

▼そして、こちらが小松氏の「読み下し文・口語文」の冊子です。

 ▽読み下し文のページ(下部に小松氏による注釈付き)

 ▽口語文のページ

上記冊子は、B5サイズで、下部に言葉の注釈を多く入れた読み下し文と口語文を掲載した作りでした。

2022年 現代語訳冊子の発行

令和6年(2022年)6月、小松氏が、現代語文だけの冊子作成を行うことを決め、その際に、A5サイズで読みやすいスタイルに改訂しました。

と、そのような流れで、現代語訳「皆川正中録」が誕生しました。口語で皆川正中録が読めるのはこの冊子だけです。現代語なので、物語にすんなりはいりこむことができ、物語を楽しめます。

刊行情報

中田益雄家文書
解 読/荒川哲男
現代語訳/小松義邦
発 行/小松義邦
※栃木市の各図書館でご覧いただくことができます。

2025年7月再販 の詳細は下記です
「口語 別本 皆川正中録」再販のおしらせ

この書籍の紹介ページは下記です
「口語 別本 皆川正中録」は、誰もが気楽に楽しめる、初の現代語訳です。皆川広照が活躍します。

現在購入できる、皆川広照関連冊子(小松義邦氏作成)
皆川広照、再起への道~幸嶋若狭大坂物語を読む~ 800円
皆川家臣帳(改訂版として2025.9再販) 600円
口語 皆川歴代記(改訂版として2025.8再販) 800円
現代語訳 別本 皆川正中録(2025.7再販) 1300円 
復刻版 皆川広照伝 (残部僅少) 700円 ※皆川街づくり協議会発行冊子の取次販売

※郵送の場合、1冊につき送料210円です。
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小松義邦氏 略歴
栃木市西方町の郷土史家。
研究対象/真名子の八百比丘尼伝説、皆川広照・皆川氏、西方町の歴史・西方氏ほか
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栃木市編入前の西方町にて、町教育員会からの委嘱で1998年(H10年)に西方町郷土史研究会を発足し、史料集めや古文書解読に励む。2011年(H23年)発行の「西方町史」編さん時には一部の執筆を担当し、その後の町発行の「西方町の民俗」の編集も担当するなど、行政から信頼を寄せられる。研究成果を地元に残そうと、私家版として多数の冊子を発行し、地域の図書館への寄贈や、一部の書籍は地元小中学校の生徒に無償での配布なども実施。栃木市皆川町の「皆川地区街づくり協議会 歴史文化部会」からの委託を受けて「皆川広照伝」を復刻。郷土史を研究し、冊子を発行し続けている。

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